小説

日野くんの話。

「あっ日野サンだ。日野サ~ン」 まだこの練馬美術大学に入ったばかりらしいあどけない顔つきの男子大学生二人が、校舎の二階の窓からだらしなく窓枠に体をあずけてだらけている金髪にブリーチした名物大学生に手を振った。 日野と呼ばれたこの大学生も力な…

生まれる前と胎内では、世界はひとつ。そして僕は、まだ生まれていなかった。WEB版

赤い翼は天に舞い、青い空を泳ぐ。それは「セフィロトの種」と呼ばれた、生命の樹の果実から採れる一粒の「遺産」から始まった。セフィロトはエデンに生えていた、神に等しき永遠の命を得る果実を結実させる樹である。現在は種のみが一粒保管されていたが、極…